第 18 回

社団法人 日本工芸会正会員・参与
重要無形文化財保持者

桂 盛仁

略歴
昭和19年 東京都文京区生まれ
昭和35年 父・桂盛行氏に師事
昭和43年 武蔵野美術短期大学卒業
平成 7年 第25回伝統工芸日本金工展にて文化庁長官賞受賞
平成10年 第45回日本伝統工芸展にて東京都知事賞受賞
平成20年 重要無形文化財保持者に認定

 今回お邪魔するのは、彫金の重要無形文化財保持者(人間国宝)桂盛仁先生のお仕事場です。それは、東京練馬区の住宅街に位置するご自宅のお二階にあり、お父様の代からこの地で、彫金の柳川派の流れを汲んだ「金具」の制作を中心になさっています。

 主に、動物や昆虫をモチーフとして、装身具、帯留や香炉など、とても丹念にお仕事をなさっておられ、その詳しい打ち出し技法のことについては、本号の特集ページ(2〜4ページ)にて詳しく述べられていますのでご覧ください。

 先生は、ご自分のお仕事以外にも彫金の教室を開かれており、ご自分の作業スペースの他に教室用にも使う広めの作業台スペース、それに着色やバーナーの火を使えるよう改良したキッチン部からなる一室がお仕事場のメインとなっており、その隣に「金銷し」と呼ばれるメッキ作業専用の部屋が設けられています。

 お部屋の天井からの蛍光灯照明器具は、机上に電気スタンドを置かずともよいように、低めに吊るされてされており、先生の合理的発想が窺えます。特に、コンパクトにまとまったご自分の作業スペースでは、効率的にお仕事が出来るよう、動かなくともすぐ手の届く範囲に必要なものが置かれてあります。写真では分かりにくいかもしれませんが、引き出し奥まで詰まった様々な形状・種類の鏨(タガネ)の数は、それは圧巻です! これだけあれば、中には一生に一回だけしか使用されない鏨もあるのではないでしょうか。

 「金具」制作という、彫金のカテゴリーの中でも地味な仕事は、現代社会においてなかなか本格的に従事する人が出にくい状況です。そんな中、先生が2年前に人間国宝に認定されたことも相まって、この工房がこれまで以上に新たな人材育成の場になり、「金具」ひいては「日本の金工」の作家やファン層を、増やしていただけるものと信じております。



唐辛子 帯留金具


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