第 17 回


キャスターで回転し使い易く、また音が響かないよう工夫された、鍛金用木台

井尾 建二 
社団法人日本工芸会正会員

略歴
1945年 香川県生まれ
1969年 金工家井尾敏雄に師事
1977年 第17回伝統工芸新作展・第7回日本金工展奨励賞受賞
1983年 第30回日本伝統工芸展奨励賞受賞 ほか

日本伝統工芸展・日本金工展などで鑑審査員を務める
青山彫金・金工スクール主宰、武蔵野美術大学講師
「金工の着色技法」(1998年理工学社刊、共著)


 東京の華やかな青山通りの裏手を歩くと、場所柄ちょっと意外な感じもしますが、ビルの谷間に頭上から、微かに金属を打つ音が耳に入ってきます。

ここは、開講33年目を迎えられた、「青山彫金・金工スクール」さんで、今回取材させていただいたのは、こちらの教室を主宰なさっている井尾建二さんです。このビルの2階で、彫金・鍛金・ジュエリー各種教室を開講なさっており、1階は生徒さんや講師の方々の作品展示ギャラリーとなっています。通常、鍛金の仕事は、金槌で金属板を絞る音が甲高く響き渡るものですが、ご近所や階下への配慮から、ゴムのマット・キャスターを使うことで台に工夫がなされ、より音が抑えられたものになっています。

井尾さんご自身は、彫金・鍛金作家としてご活躍のほか、現在(社)日本工芸会金工部会の部会長もお務めで、金工作家の皆を束ねると同時に、ここでの教室を通してこれからの若手金工家を盛りたてていこうと熱い思いをお持ちになり、奮闘中でいらっしゃいます。

もともと金工への関わりは、高松工芸高校(工芸科)のご出身でもあり、金工作家であったお父様や明治〜昭和の彫金家塚田秀鏡、秀映が姻戚で、まさに隣家にいるという環境であったことによるそうです。

一旦は、大学や就職もマスコミ関係にお進みだったようですが、やはり血筋でしょうか結局は金工家になられ、さらに現在ご子息鉱一さんも鍛金をなさっており、将来が楽しみです。仕草などそっくりでいらっしゃるので、きっとお父様の思いを引き継いで、日本の金工を盛りたてていただけると思います。

「銀鉄製香器」 第35回日本金工展


整然と並ぶ、おびただしい数の金鎚や当て金など道具類


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