第 9 回

羽場 宗城 
加賀金工作家協会会員

プロフィール
1964年 石川県金沢市生まれ。
1989年 金沢卯辰山工芸工房金工技術研修者として入所。
金沢市工芸展をはじめ美術展などへの出展のほか、グループ展、個展を開催。
クラフト、ジュエリーなどの分野で活躍。

 「作りたいものを作りたいやり方で作る」というスタンスで彫金の作家活動に取り組んでいるという羽場宗城氏。

  もとはコンピュータ関係の仕事に就職した羽場さんだったが、体を壊してしまい仕事を続けられなくなってしまった。「何かしなければ」という思いが続いたある日、たまたま見ていたドラマで、机に向かって何か作業をしているおばさんが、自分で作ったものを納品して生計を立てている場面に出くわした。そのとき「これならできるかも」と思った羽場さんは、工芸関係の教室を探し、金工作家の嶋野さんが開いている彫金教室に通い始めた。当時羽場さんは25歳。

  その後、金沢市卯辰山工芸工房が募集する技術研究者研修に応募、1期生として3年半金工技術を学んだ。当時、工房の研修者はすでに作家活動を行っている人だったり、大学で専門知識を学んでいる人ばかりで、知識や技術の基本がない自分がそこにいることに場違いな雰囲気を感じたという。

  最初の1年間は大変だったが、勉強しながら金属以外の素材を手がける研修生との交流も増え、今も当時の仲間とグループ展を開催したり、またお互い助けあう場面も多くあるという。

  そんな羽場さんが、現在の作品づくりの方向へ進んだきっかけは、金沢市野町で宝飾を手がける彫金師との出会いだった。話を聞いているうちに「自分も宝飾ができるかも」と。スタートはいつも「してみようかな」から始まるのだと羽場さんは笑う。図面を設計せずに作品を作り出すことが結構あって、「だから失敗することも結構ある」らしく、それはそれで羽場さん流のやり方で、楽しく自由にという発想が、羽場さんの作品に輝きを与えているのかもしれない。

カメオ、リング、ペンダントなどの作品。どれもずっしりとした質感


煎茶で使う菓子用の道具。「こんなモノを作って欲しい」との依頼が結構あるそうだ


繊細なデザインを生み出す道具類。既製品に自分で手をくわえたものも少なくない


作品づくりの図面


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