第 8 回

大澤 光民 
重要無形文化財保持者
伝統工芸士(銅器焼型)ほか


プロフィール

昭和16年高岡市生まれ。富山県立職業補導所銅器科卒業後、越井製作所勤務を経て昭和44年に大澤美術鋳造所を設立。昭和55年に独自の鋳造技法「鋳ぐるみ」を考案。平成17年に重要無形文化財保持者に認定。
昭和52年 通産省の伝統工芸士認定
昭和59年 第14回日本金工展「東京都教育委員会賞」
  第31回日本伝統工芸展「日本工芸会奨励賞」
平成11年 第29回日本金工展「日本工芸会賞」
  第47回日本伝統工芸展「高松宮記念賞」
平成16年 厚生労働省による「現代の名工」表彰  ほか多数

 伝統的な焼型鋳造の高度な技に、独自の「鋳ぐるみ」という技法を確立。富山県在住者として、故金森映井智氏に次ぐ二人目の人間国宝に認定された大澤光民さん。

  庄川沿いの豊かな水郷地帯で農家の長男として誕生した大澤さんは、中学卒業後に県立職業補導所の銅器科に進学。その後、実習先の銅器製作会社に就職。持ち前の負けん気と向上心から、鋳型の土づくりや仕上がりを研究し、与えられた仕事の中にも創意工夫をとりいれた若い頃。そんな仕事に対する意欲は、ものづくりに対する意欲へと向かい、27歳の時に高岡市特産産業技術者養成スクールを受講。ものをつくる力と感性の大切さを学び、その頃から職人としての自覚が芽生えたのだと。翌年、大澤美術鋳造所設立と同時に高岡市展、県展に初出品し初入選を果たされます。その後も人間国宝の香取正彦氏をはじめ多くの名工たちに学び、歴史的な器物に関する知識や技術を深めていった大澤さん。「昔から仏像などに使われてきた伝統的技法である焼型鋳造。今後はこの技法をどうやって守っていくかが使命」と語る大澤さんは、「新しい技術と技法で生み出した“新しい伝統”を残していきたい」とも。

  幼い頃から農業を手伝ってきた大澤さんにとって、自然の草木にも不思議な感動との出会いがあり、それが新しい創作性へと加わっていくのだと語られます。埃一つなく整理整頓された工場内。常に新しいものを取り入れようとする向上心。そして伝統を受け継ぎ、伝える使命感。すべてが、「何事にも絶対手抜きしない」という大澤さんの姿勢の現れだということがわかります。

金属棒を鋳型に固定する「鋳ぐるみ」という独自の鋳造技法。人間国宝の香取正彦氏による命名


土づくり


くぎ切り


大澤氏の焼型鋳造でつくられた大日如来像。仕上げ、彫金、着色など高岡銅器伝統工芸士の制作協力で3年がかりで完成された作品


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