第 5 回

鹿島 和生 
日本工芸会正会員
日本工芸会金工部会幹事


プロフィール
1958年 東京に生まれる
1989年 第19回伝統工芸日本金工展「文化長官賞」受賞
1993年 第33回伝統工芸新作展「日本工芸会東日本支部賞」受賞
1994年 財団法人美術工芸振興会佐藤基金 第11回淡水翁賞受賞ほか多数

 彫金作家鹿島和生さんの自宅兼工房は、東京上野公園の近く台東区池之端にあります。築20数年の鉄筋3階建ての1階が工房です。ケシ場※1が機能的で使い易く、気に入っているそうです。前々回このコーナーにご登場の田中先生も、こちらでケシをされる程だとか。

  祖父の故鹿島一谷さんが彫金人間国宝、ご両親が日本画家という芸術一家の環境の中にあり、「こういう世界だけは…」と思っていたのが、「黒光りする彫金道具が、お爺の代で終わってしまうことが、なんだかもったいなかったので…」と、20歳の時に、当時80歳の祖父のもとに弟子入りを決意。以来、18年にわたって師事していらっしゃいました。祖父の一谷さん亡き後、独り立ちし工房を引き継ぎ、現在は「日本伝統工芸展」を中心にグループ展や個展も積極的に開催していらっしゃいます。

  最近、布目象嵌※2を習いにくる人たちに指導する立場となり、弟子入りした当時は理屈で分かっていなかった事が一つ一つ腑に落ちるようになってきたとおっしゃいます。また、生徒さんの布目を切る音を聞けば、ちゃんと目が切れているかどうか見なくてもわかるそうです。

  今年芸大(彫刻)に入学されたご長男が、将来、父和生さんの道具を見て同じように考え、作風は違えど「鹿島布目」が続いていけばと、一人勝手に思いながら工房を後にした次第です。

※1 ケシとは、例えば金と水銀を合わせたものを用い、金属表面に塗り焼付けめっきをすること。その際熱で水銀分を飛ばす時に、換気がうまくいっていないと中毒を起こす。
※2 布目象嵌とは、金属表面に縦横斜めに鏨で目を切っておき、そこに0.02〜0.03ミリの箔を押しつけ、文様を表す彫金技法の一つ。


道具類


象嵌鉄鉢「響」


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